個人事業主の勘定科目はどう選ぶ?決算書の18科目と“迷いやすい経費”10選、経費にならない5つの支出をFP2級がやさしく解説

レシートを色分けした引き出しに仕分ける人のイラスト 確定申告・副業・個人事業

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レシートの束を前に、電卓ではなく「これは通信費?消耗品費?それとも雑費?」で手が止まる。帳簿付けでいちばん時間を食うのは、計算ではなく科目選びだったりします。気づけば「雑費」の金額だけがすくすく育っていく……あれ、誰が水をあげているんでしょうね。

結論から言うと、勘定科目は「正解を当てるクイズ」ではありません。国税庁の決算書に並んでいる科目を土台に、一度決めたルールで毎年同じように分けることのほうがずっと大事です。この記事では、個人事業主・フリーランスが迷いやすい経費の分け方を、国税庁の資料をもとにやさしく整理します。

結論:迷ったら「決算書の18科目+自分ルール」で決める

先に要点だけまとめます。

  • 青色申告決算書には、租税公課から雑費まで18個の経費科目があらかじめ印刷されている
  • それに当てはまらない経費のために、空欄の行が6つ用意されている(「会議費」「支払手数料」などを自分で書き足せる)
  • 大事なのは科目名よりも、そもそも経費になるかどうかと毎年同じ分け方をすること
  • 所得税・住民税、国民年金・国民健康保険料、自分の食費は経費にならない
  • 商工会や青色申告会の会費は、意外にも「租税公課」に入る

科目を少し間違えても、経費の合計額は変わりません。本当に怖いのは「経費にならないものを経費に入れること」です。ここを押さえるだけで、帳簿付けの迷いはぐっと減ります。

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そもそも勘定科目って何?決算書に並ぶ18科目

勘定科目とは、お金の出入りを「何に使ったか」で仕分けるための見出しのこと。本棚のラベルのようなものです。

国税庁の「青色申告決算書(一般用)」の損益計算書には、経費として次の18科目が印刷されています。

科目 主な中身(例)
租税公課 個人事業税、事業用の固定資産税・自動車税、収入印紙、商工会などの会費
荷造運賃 商品の発送料、梱包材
水道光熱費 電気・ガス・水道(自宅兼用なら事業分だけ)
旅費交通費 電車・バス・タクシー、出張の交通費や宿泊費
通信費 スマホ代、ネット回線、切手
広告宣伝費 ネット広告、チラシ、名刺
接待交際費 取引先との飲食、手土産
損害保険料 事業用の火災保険・自動車保険
修繕費 事業用の機器や建物の修理代
消耗品費 文房具、10万円未満の備品
減価償却費 パソコン・車など、長く使う高い物を年ごとに分けて計上する分
福利厚生費 従業員の健康診断・慶弔費など
給料賃金 従業員への給料(青色事業専従者給与は別欄)
外注工賃 外部への業務委託料
利子割引料 事業用の借入金の利息
地代家賃 事務所家賃、駐車場代(自宅兼用なら事業分だけ)
貸倒金 回収できなくなった売掛金
雑費 どれにも当てはまらない少額の経費
国税庁「令和7年分 青色申告決算書(一般用)の書き方」の記載例をもとに作成。中身の例は一般的な分け方です。

そして決算書には、18科目の間に空欄の行が6つあります。ここに「車両費」「会議費」「新聞図書費」「支払手数料」のように、自分の仕事でよく出てくる科目を書き足して使えます。決まった18個にむりやり押し込む必要はない、ということです。

なお、福利厚生費は従業員のための費用の科目です。ひとりで仕事をしている人が自分の健康診断代を入れる場所ではないので、ご注意を。

迷いやすい経費10選|この科目でOK

相談でよく聞かれるものを、一般的な分け方でまとめました。複数の科目が考えられるものは、どちらか一方に決めて毎年そろえればOKです。

よくある支出 よく使う科目 ひとことメモ
仕事用スマホの通話料・ネット回線 通信費 私用と兼用なら事業で使う割合だけ
商品を宅配便で送った送料 荷造運賃 書類を郵送する切手は通信費が一般的
打ち合わせのカフェ代 会議費(追加) 取引先にごちそうしたなら接待交際費
仕事の本・オンライン講座 新聞図書費・研修費(追加) 少なければ雑費でもよい
銀行の振込手数料・決済手数料 支払手数料(追加) 件数が多い人は専用科目が見やすい
ガソリン代・車検代 車両費(追加)または旅費交通費 自家用と兼用なら按分
8万円のパソコン 消耗品費 10万円未満なら買った年に全額経費
25万円のパソコン 減価償却費(または特例で一括) 青色申告なら少額減価償却資産の特例が使える場合あり
商工会・青色申告会の会費 租税公課 国税庁の手引きにも明記されている
収入印紙・個人事業税 租税公課 所得税・住民税は経費にならない
(追加)は決算書の空欄に自分で書き足す科目。科目名はあくまで「仕分けのラベル」なので、自分が後で見て分かることが一番です。

パソコンなど高い物の線引きは少しややこしく、10万円未満・20万円未満・30万円未満(2026年4月以降に買った物は40万円未満)で扱いが変わります。くわしくは仕事用パソコンは一括で経費にできる?で整理しています。

スマホ代や家賃のように私用と兼用の支出は、科目よりも先に「何割を事業分にするか」を決めるのが先。割合の決め方は自宅で副業、家賃や電気代は経費にできる?で解説しています。

科目より大事!経費にならない5つの支出

ここがこの記事でいちばん大事なところです。国税庁の「青色申告の決算の手引き」では、次のような支出は必要経費にならないとされています。

  1. 所得税・住民税(あわせて延滞税・加算税、罰金、交通違反の反則金なども)
  2. 衣料費や食費などの家事上の費用(ひとりで食べたランチは、仕事の日でも経費になりません)
  3. 自宅兼用の家賃・電気代などのうち、生活に使っている部分
  4. 国民年金・国民健康保険料(経費ではなく、確定申告の「社会保険料控除」で差し引く)
  5. 生計を一にする家族に払う家賃や給料(青色事業専従者給与の届出をしている場合は別)

同じ「税金」でも、個人事業税や印紙は経費(租税公課)、所得税や住民税は経費にならない。ここが混ざりやすいポイントです。経費にならない支出を事業用の口座やカードから払ったときは、「事業主貸」という科目で処理するのが一般的です。「事業のお財布から、自分の財布にお金を貸した」というイメージですね。

「雑費」が膨らむと困る3つの理由

迷ったら全部雑費、は気持ちとしてはよく分かります。ただ、雑費が経費の大半を占めるような帳簿は、次の3つの意味で損をしがちです。

  • 自分が見直せない:何にいくら使ったかが分からず、節約やムダの発見ができない
  • 説明に時間がかかる:もし税務署から質問されたとき、中身を1件ずつ説明し直すことになる
  • 翌年もっと迷う:去年の分け方が分からないので、毎年ゼロから悩み直す

おすすめは、同じ支出が年に何回も出てくるなら専用の科目を作ること。振込手数料、書籍代、打ち合わせ代あたりが代表例です。雑費は「たまにしか出てこない少額の支出」の置き場所くらいに考えておくと、帳簿がすっきりします。

科目選びをラクにする3つの方法を比べる

毎回悩まないためには、最初に「自分ルール」を作ってしまうのが近道です。やり方は大きく3つあります。

方法 費用の目安 手間 こんな人に
A. 自分用の科目メモを作る 0円 最初に30分、あとは見るだけ 取引が少ない・手書きや表計算で帳簿を付けている
B. 会計ソフトに任せる 月額のプラン料金 明細を取り込んで確認するだけ カード・口座の取引が多い・青色申告で65万円控除を狙う
C. 税理士に相談できる体制を持つ 月額の会費や顧問料 迷ったときに聞くだけ 判断に迷う支出が多い・税務調査が心配
AとBの組み合わせがいちばん現実的。「メモで決めたルールを、ソフトに覚えさせる」流れです。

会計ソフトの多くは、銀行口座やクレジットカードの明細を取り込むと科目の候補を出してくれ、一度直すと次から覚えてくれる機能を持っています(機能はソフトやプランによって異なります)。「毎回同じように分ける」を機械に任せられるのが最大の利点です。ソフトごとの違いは個人事業主の会計ソフトはどう選ぶ?で比較しています。

また、「この支出は経費にしていいのか」という判断そのものに迷う方は、税理士に相談できる体制を月額で持っておくのも選択肢のひとつです。科目の名前よりも、経費になるかどうかの判断のほうが、間違えたときの影響が大きいからです。

まとめ|今日やるのは「自分の科目メモ」1枚

  • 青色申告決算書には18個の経費科目と空欄6行があり、科目は自分で書き足せる
  • 科目名は「仕分けのラベル」。一度決めたら毎年同じ分け方にそろえる
  • 商工会・青色申告会の会費や収入印紙、個人事業税は租税公課
  • 所得税・住民税、国民年金・国保、自分の食費は経費にならない(事業口座から払ったら事業主貸)
  • 何度も出てくる支出は専用科目に。雑費は「たまに出る少額」だけ
  • 取引が多いなら、会計ソフトに分け方を覚えさせるのがいちばんラク

やることを1つに絞るなら、今日、よく出てくる支出を10個書き出して、横に科目名を書く。それだけで「自分ルール」の完成です。あとはレシートを見るたびにそのメモを開けばOK。雑費くんにも、そろそろ一人前の名前を付けてあげましょう。

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※本記事は2026年10月時点の国税庁の公表資料(「令和7年分 青色申告決算書(一般用)の書き方」「令和7年分 青色申告の決算の手引き(一般用)」、タックスアンサーNo.2210「やさしい必要経費の知識」、No.2100「減価償却のあらまし」)をもとに作成しています。科目の分け方は一般的な例です。個別の判断は所轄の税務署または税理士にご確認ください。

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