家族に払う給料は経費にできる?青色事業専従者給与の3つの条件と、届出書の期限“3月15日”をFP2級がやさしく解説

自宅の事務スペースで夫婦が並んで事業の書類とパソコンを確認しているイラスト 家計管理・貯金

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「電話番をしてくれた奥さんに、お給料って払っていいの?」——個人事業主になると、一度はぶつかる疑問です。家族はタダ働きが当たり前、と思って何年も過ぎてしまった…という声もよく聞きます(そして年末に、家族から静かな圧を感じる)。

実は税金のルールでは、家族に払った給料も、条件を満たせばまるごと経費にできます。これが「青色事業専従者給与(あおいろじぎょうせんじゅうしゃきゅうよ)」という制度です。

先に結論:この記事でわかること

  • 青色申告なら、家族への給料を上限なし(労務の対価として相当な額まで)で経費にできる
  • 使えるのは「生計を一にする」「15歳以上」「年の半分超を専ら手伝っている」家族
  • 事前に届出書が必要。期限は原則3月15日(開業したてなら開業から2か月以内)
  • 白色申告でも「事業専従者控除」は使えるが、上限は配偶者86万円・その他の親族50万円
  • 給料を払うと、その家族は配偶者控除・扶養控除の対象から外れる

青色事業専従者給与とは?家族への給料を経費にできる制度

本来、生計をともにする家族に払ったお金は、原則として経費になりません。財布が同じなので、「自分から自分へ払った」のと変わらないからです。

ただし例外があり、青色申告をしている人が、一定の条件を満たす家族(=青色事業専従者)に給料を払った場合は、その金額を必要経費にできます。国税庁の要件では、給料は「届出書に記載されている方法により支払われ、かつ、その記載されている金額の範囲内で支払われたもの」であることとされています。

経費が増えれば、そのぶん事業の利益(所得)が下がります。所得税・住民税・国民健康保険料は、どれも「所得」をもとに計算されるので、家計全体で見たときのインパクトは小さくありません。

使えるのは誰?青色事業専従者の3つの条件

国税庁が示している要件は、次の3つです。

  1. 青色申告者と生計を一にする配偶者その他の親族であること(親・子・兄弟姉妹などもOK)
  2. その年の12月31日現在で年齢が15歳以上であること
  3. その年を通じて6か月を超える期間、その青色申告者の事業に専ら従事していること

ひっかかりやすいのが3つ目の「専ら従事」です。他社にフルタイム勤務しながら、夜だけ手伝う——という形だと「専ら」とは認められません。あくまで、その事業の仕事が生活の中心になっていることが前提です。

なお、年の途中で開業した場合など、そもそも1年間従事しようがないケースでは、「従事できる期間の2分の1を超えていればよい」という調整もあります。8月開業なら、まるまる6か月は物理的に無理ですからね。

白色申告の「事業専従者控除」とどう違う?

青色申告をしていない(白色申告の)人にも、似た制度として「事業専従者控除」があります。ただし金額の考え方がまったく違います。

項目 青色申告:青色事業専従者給与 白色申告:事業専従者控除
経費にできる金額 金額の上限なし(届出書の範囲内で、労務の対価として相当な額) 配偶者は最高86万円、15歳以上のその他の親族は最高50万円
もうひとつの上限 控除前の事業所得等 ÷(専従者の数+1)と比べて低いほう
事前の届出 必要(青色事業専従者給与に関する届出書) 不要(確定申告書に記載)
実際にお金を払う必要 あり(給料として支払う) なし(計算上の控除)
配偶者控除・扶養控除 使えない 使えない
向いている人 家族が本格的に事業を手伝っている 手伝いが限定的/まだ青色の申請をしていない

差はけっこう大きいです。たとえば配偶者に月15万円(年180万円)払える働きをしてもらっている場合、白色だと86万円で頭打ちですが、青色なら180万円がそのまま経費になり得ます。青色と白色の全体像は青色申告と白色申告の違いは?65万円控除の条件で整理しています。

いちばんの関門は「届出書の期限」

この制度でいちばん多い失敗が、給料は払っていたのに、届出書を出していなかったというパターンです。届出が無いと、1円も経費になりません。

提出するのは「青色事業専従者給与に関する届出書」。期限は国税庁の表記で3月15日、ただしその年の1月16日以後に新たに事業を開始した場合や、新たに専従者がいることとなった場合は、その開始した日や専従者がいることとなった日から2か月以内です。

ポイントは「その年のぶんを、その年の早い時期に出す」こと。確定申告のときにさかのぼって出す、はできません。今年の途中で家族が手伝い始めたなら、そこから2か月以内が勝負です。青色申告そのものの申請期限とセットで押さえたい方は、青色申告承認申請書はいつまで?も確認しておくと安心です。

届出書には「毎月◯万円まで」「賞与は年◯回・◯万円まで」といった上限を書きます。実際に払うのはその範囲内である必要があるので、あとから増やしたいときは変更届を出します。少し余裕をもった金額で書いておくのが実務的です。

給料を払うと出てくる「3つの宿題」

① 扶養から外れる

国税庁は「青色申告者の事業専従者として給与の支払を受ける人または白色申告者の事業専従者である人は、同一生計配偶者や扶養親族にはなれません」としています。つまり、配偶者に給料を払うなら、配偶者控除・配偶者特別控除・扶養控除とは併用できません。

ですので、判断はいつも「払う給料を経費にする効果と、失う控除を天秤にかける」ことになります。手伝いがごく軽い(月1〜2万円相当)なら、扶養のままのほうが有利なことも普通にあります。

② 源泉徴収と、給与の届出

家族であっても「給与を払う人」になるので、源泉徴収が必要になります。国税庁の案内では、給与の支払事務所を開設した場合、開設の事実があった日から1か月以内に「給与支払事務所等の開設届出書」を提出することとされています。

毎月納付が大変な場合は「源泉所得税の納期の特例」という制度があり、給与の支給人員が常時10人未満なら、1〜6月分は7月10日、7〜12月分は翌年1月20日とまとめて納付できます。家族1人ならまず該当するので、開業届と一緒に申請しておくとラクです。

なお、実際に天引きする税額は国税庁の「源泉徴収税額表」で決まり、給与の額によっては0円になることもあります。「税金が0円だから手続きも不要」ではない点だけ注意してください。

③ 金額が「労務の対価として相当」か

要件には「青色事業専従者給与の額は、労務の対価として相当であると認められる金額であること」とあります。仕事の中身に対して明らかに高すぎる給料は、否認される可能性があるということです。

目安としては、同じ仕事を他人に頼んだらいくら払うか。パート求人の時給相場×実働時間で考えると、説明しやすい金額になります。あわせて、勤務日数・業務内容のメモ、給与明細、銀行振込の記録を残しておきましょう。手渡しは「本当に払ったの?」の証明がいちばん難しいので、振込にするだけで安心度がまるで変わります

家族への給与は、金額の妥当性を見られやすい論点でもあります。もし調査の連絡が来たときに相談先がないのが不安、という方向けに、国税出身の税理士が事前準備から当日の立会い・修正申告まで対応するシロクマくん税務調査あんしんメンバーシップのような月額制のサービスもあります(個人プランは年払いで月あたり約1,078円・税込/執筆時点。対象は直近3年間の収入が各年5,000万円以下の個人事業主・フリーランス)。

まとめ:家族の働きを「見える化」して、正しく経費にする

  • 青色申告なら、家族への給料を上限なしで経費にできる(労務の対価として相当な額まで)
  • 条件は「生計を一にする親族」「12月31日時点で15歳以上」「年を通じて6か月超、専ら従事」
  • 届出書の期限は原則3月15日/開業・専従開始からなら2か月以内。出し忘れると全額アウト
  • 白色の事業専従者控除は配偶者86万円・その他50万円が上限
  • 給料を払うと配偶者控除・扶養控除は使えない。効果と失う控除を比べて決める
  • 源泉徴収の手続き(開設届出書は1か月以内・納期の特例)と、振込+記録をセットで

毎月の給与計算と源泉徴収、そのうえで帳簿づけ…と手作業だと地味に重い作業です。専従者給与を始めるなら、会計ソフトで最初から仕組みにしてしまうのが結局いちばんラクです。ソフトごとの違いは個人事業主の会計ソフトはどう選ぶ?で比較しています。

※制度の内容・料金は執筆時点(2026年9月)の情報です。個別の判断は所轄の税務署または税理士にご確認ください。

「うちの場合、専従者給与と扶養のどっちが得なんだろう?」という方は、宅建士・FP2級の私が ココナラのホームページ制作 で、開業まわりのご相談にも合わせて乗っています。気になる方はぜひ。

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