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はじめて請求書を出すことになって、真っ白なExcelの画面の前で15分くらい固まった——そんな経験、ありませんか。「金額と振込先だけ書けばいいのでは?」と思いきや、ネットで調べると「インボイス」「登録番号」「区分記載」と知らない言葉が並んでいて、そっとタブを閉じたくなります。
でも、大丈夫です。請求書は覚えるべき項目がハッキリ決まっているので、一度型を作ってしまえば、あとは毎月コピーして数字を書き換えるだけになります。
先に結論:請求書はこの4つを押さえればOK
- 請求書に「国が決めた書式」はない。手書きでもExcelでもメール本文でも法律上はOK
- ただし取引相手(買う側)が消費税の計算に使うので、決まった項目は入れておく
- インボイス登録をしていない人(免税事業者)でも、5つの項目を書けば相手は困らない
- 2026年10月1日から、登録なしの人に払った分の控除が「8割」から「7割」に下がる。請求書の書き方そのものは変わらないが、取引先との会話には影響する
順番に見ていきましょう。
1. 請求書に「決まった書式」はない。でもこの5項目は必ず入れる
意外に思われるかもしれませんが、請求書のフォーマットを法律が指定しているわけではありません。テンプレートを買う必要も、専用ソフトを使う義務もありません。
ただし、請求書を受け取った側(取引先)は、それを保存して自分の消費税の計算に使います。そのため国税庁は「これが書いてある請求書等を保存してください」というルールを決めています。インボイス登録をしていない人が出す請求書でも、次の5項目が入っていれば、相手は経過措置(後述)を使えます。
- 書類の作成者の氏名または名称(=あなたの名前・屋号)
- 取引をした年月日
- 取引の内容(軽減税率8%の対象があるならその旨も)
- 税率ごとに区分して合計した金額(税込)
- 請求書を受け取る相手の氏名または名称
意外と抜けがちなのが5番の「相手の名前」です。自分の名前は書くのに、宛先を「御中」だけで済ませてしまう人がとても多い。会社名は略さず正式名称で書きましょう。
なお、この5項目は「最低限」の話です。実務では次のものも入れておくと、相手の経理担当者に感謝されます。
- 請求書番号(後から「あの請求書」と特定できる)
- 支払期日(例:2026年10月31日)
- 振込先の口座情報(銀行名・支店名・口座種別・口座番号・カナ名義)
- 小計・消費税・合計の3段書き
2. インボイス登録している人が「追加で」書く2項目
インボイス(適格請求書)発行事業者に登録している場合は、上の5項目に加えて次の2つが必要です。国税庁が示す適格請求書の記載事項は全部で6つで、上の5項目とほぼ重なっているためです。
- 登録番号(Tから始まる13桁。個人事業主はマイナンバーとは無関係の番号が振られます)
- 税率ごとの消費税額(10%分・8%分をそれぞれ円単位で書く)
つまり、登録している人としていない人で、請求書の8割は同じということです。違いは「番号を書くか」「消費税額まで書き切るか」。ここを表にまとめました。
| 記載する項目 | 登録していない人 (免税事業者) |
登録している人 (インボイス発行事業者) |
|---|---|---|
| 自分の氏名・屋号 | 必要 | 必要 |
| 取引年月日 | 必要 | 必要 |
| 取引の内容 | 必要 | 必要 |
| 税率ごとの合計額 | 必要(税込でOK) | 必要(税抜または税込) |
| 相手の氏名・名称 | 必要 | 必要 |
| 登録番号(T+13桁) | 書けない(持っていない) | 必要 |
| 税率ごとの消費税額 | 任意 | 必要 |
「そもそも自分は登録すべき?」で迷っている方は、副業でインボイス登録は必要?“しない”判断の3つの基準のほうを先に読んでみてください。登録は義務ではありません。
3. 【2026年10月から】登録なしの人はここが変わる
ここが今回いちばんお伝えしたいところです。
インボイス制度では、登録していない人に支払った代金について、払った側(取引先)が消費税の控除を満額できないという仕組みがあります。ただし、いきなりゼロにすると影響が大きいため、段階的に下げていく「経過措置」が設けられています。
そして2026年(令和8年)9月30日で「8割控除」の期間が終わり、10月1日からは「7割控除」になります。令和8年度の税制改正で期限が2年延長されたうえで、割合が見直されました。今後のスケジュールは次のとおりです。
| 期間 | 取引先が控除できる割合 |
|---|---|
| 〜2026年9月30日 | 80% |
| 2026年10月1日〜2028年9月30日 | 70% |
| 2028年10月1日〜2030年9月30日 | 50% |
| 2030年10月1日〜2031年9月30日 | 30% |
| 2031年10月1日〜 | 0%(控除なし) |
では、請求書の書き方を変える必要があるのでしょうか。答えは「あなたの側は変えなくてよい」です。「70%控除対象」といった記載が必要になるのは、あくまで支払う側の帳簿であって、請求書を出すあなたの義務ではありません。
ただし、取引先から「消費税分を減らせないか」と相談される可能性はあります。このとき知っておいてほしいのは、取引先の一方的な都合で報酬を勝手に減らすことは、独占禁止法などの問題になり得るということ。公正取引委員会も、免税事業者との取引について一方的な単価の引き下げに注意を促しています。あわせて、2026年1月からは旧・下請法が「取適法(中小受託取引適正化法)」に変わり、規制の対象も広がりました。まずは話し合いのテーブルにつく、が正解です。
4. 源泉徴収がある仕事の請求書は、書き方にコツがある
原稿料・デザイン料・講演料・イラスト料など、一部の報酬は支払う側があらかじめ所得税を差し引いて(源泉徴収して)払う決まりになっています。税率は10.21%、1回の支払いが100万円を超える部分は20.42%です。
このとき効いてくるのが、請求書で「報酬額」と「消費税額」を分けて書くこと。国税庁は、報酬額と消費税額が明確に区分されている場合、報酬部分だけを源泉徴収の対象にしてよいとしています。逆に、税込の合計額しか書いていないと、消費税込みの金額に10.21%がかかることがあります。
10万円+消費税1万円の仕事で比べてみましょう。
| 分けて書いた場合 | 税込合計だけ書いた場合 | |
|---|---|---|
| 源泉徴収の対象 | 100,000円 | 110,000円 |
| 差し引かれる額 | 10,210円 | 11,231円 |
| 手取り | 99,790円 | 98,769円 |
最終的な税金の総額が変わるわけではないのですが、手元にお金が入ってくるタイミングは早いほうが助かります。書き方ひとつなので、やらない理由がありません。
5. よくあるつまずき3つ
振込手数料はどちらが持つ?
法律上の原則は「支払う側が負担」ですが、実務では契約や慣習で決まっていることがほとんどです。もめる前に、最初の見積書や契約書の段階で決めておくのがいちばん平和です。請求書に「振込手数料は貴社にてご負担ください」と一行入れておくのも手です。
請求書は「送ったら終わり」ではない
出した請求書の控えは、あなた自身も保存しておく必要があります。紙で受け取ったものと、メール添付やダウンロードで受け取ったものではルールが違うので、ここは要注意。詳しくは領収書・レシートは何年保存する?“7年と5年”の分かれ目にまとめています。
毎月Excelで作り直している
これがいちばんもったいない。会計ソフトの多くには請求書の作成機能があり、発行した請求書がそのまま売上として帳簿に反映されます。転記ミスが消えるうえに、確定申告のときに「あれ、この入金なんだっけ」と悩む時間もなくなります。ソフト選びで迷っている方は個人事業主の会計ソフトの選び方もどうぞ。
まとめ:型を1つ作れば、来月からは数字を変えるだけ
- 請求書に決まった書式はない。ただし5項目(自分の名前・日付・内容・税率ごとの合計・相手の名前)は必ず入れる
- インボイス登録者はこれに登録番号と税率ごとの消費税額を追加する
- 2026年10月1日から、登録なしの人に払った分の控除は80%→70%へ。請求書の書き方は変えなくてよいが、取引先との会話は起きやすくなる
- 源泉徴収がある仕事は、報酬と消費税を分けて書くと手取りが増える
- 毎月Excelで作り直しているなら、会計ソフトの請求機能を一度試してみる
最初の1枚さえ作ってしまえば、来月からは日付と金額を変えるだけです。今日の30分が、これから何年ぶんもの「請求書どうしよう」を消してくれます。
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※本記事は制度の一般的な解説であり、個別の税務判断については税務署または税理士にご確認ください。


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