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毎年6月ごろ、市役所から届くあの封筒。国民健康保険料の納付書を開いて、「え、こんなに…?」と一瞬フリーズした経験はありませんか。そっと引き出しにしまっても金額は1円も減らない、というのが世の中のつらいところです。
会社員だった頃は給料から天引きで、しかも半分は会社が払ってくれていました。ところが個人事業主・フリーランスになると全額が自己負担。所得が増えた翌年に、いきなり重くのしかかってきます。
この記事では、国民健康保険料が「何で決まっているのか」と、個人事業主が見直せる5つのポイントを、宅建士・FP2級の私がやさしく整理します。
結論:国保を下げる道は「所得を正しく下げる」と「軽減制度を取りこぼさない」の2つだけ
先に結論です。国民健康保険料(自治体によっては「国民健康保険税」)を合法的に下げる方法は、大きく分けて次の2方向しかありません。
- ①「所得」そのものを正しく下げる…経費のもれをなくす/青色申告特別控除を使う
- ② 軽減・免除制度を取りこぼさない…法定軽減、非自発的失業者の軽減、産前産後の免除
そして最大の落とし穴がこれです。iDeCoや生命保険料控除、扶養控除などの「所得控除」は、所得税や住民税は下げても、国民健康保険料はほとんど下げてくれません。ここを知らないまま「節税したから国保も安くなるはず」と期待すると、翌年の納付書でもう一度フリーズすることになります。
1. そもそも国民健康保険料は何で決まる?
国民健康保険料は、ざっくり次の足し算で決まります。
- 所得割…前年の所得に応じてかかる部分(ここが一番大きい)
- 均等割…加入している人数×定額
- 平等割…1世帯あたり定額(採用していない自治体もあります)
ポイントは3つです。
(1)計算のもとは「前年1〜12月の所得」
今年たくさん稼ぐと、高くなるのは来年度の保険料です。開業1年目より2年目のほうが跳ね上がって驚く、というのはこれが理由です。
(2)保険料率も計算方式も自治体ごとにバラバラ
同じ所得でも、住んでいる市区町村で金額が変わります。「ネットで見た計算例と全然違う」のは普通のことなので、正確な金額は必ずお住まいの自治体の案内で確認してください。
(3)上限(賦課限度額)がある
いくら所得が高くても、保険料には上限があります。2026年度(令和8年度)は医療分67万円+後期高齢者支援金分26万円+介護分17万円+新設の子ども・子育て支援納付金分3万円で、合計113万円(前年度の109万円から引き上げ。介護分は40〜64歳の方が対象)。上限は年々じわじわ上がっています。
2. 最大の落とし穴:「所得控除」は国保にほぼ効かない
所得割の計算に使うのは、多くの自治体で「旧ただし書き所得」と呼ばれる金額です。定義はシンプルで、
旧ただし書き所得 = 総所得金額等 - 基礎控除43万円
つまり、引けるのは基礎控除43万円だけ。所得税の確定申告でおなじみの各種控除は、ここでは登場しません。表にすると効き方の差が一目瞭然です。
| 項目 | 所得税・住民税 | 国民健康保険料 |
|---|---|---|
| 事業の経費 | 下がる | 下がる |
| 青色申告特別控除(最大65万円) | 下がる | 下がる |
| 基礎控除 | 下がる | 下がる(43万円) |
| 社会保険料控除(国民年金など) | 下がる | 下がらない |
| 小規模企業共済等掛金控除(iDeCo・小規模企業共済) | 下がる | 下がらない |
| 生命保険料控除 | 下がる | 下がらない |
| 扶養控除・配偶者控除 | 下がる | 下がらない |
| 医療費控除・ふるさと納税(寄附金控除) | 下がる | 下がらない |
「じゃあiDeCoや小規模企業共済は意味がないの?」というと、そんなことはありません。所得税・住民税ではしっかり効きますし、老後資金にもなります。国保は下がらないと知ったうえで使えばいいだけの話です。くわしくは小規模企業共済とは?個人事業主の「自分でつくる退職金」もあわせてどうぞ。
3. 国保に本当に効くのは「経費」と「青色申告特別控除」
表のとおり、国保の所得割を下げてくれるのは経費と青色申告特別控除です。ここが唯一にして最大の攻めどころになります。
経費のもれをなくす
まずは当たり前ですが、使ったのに計上していない経費をゼロにすること。自宅で仕事をしているなら、家賃・電気代・通信費の一部を事業割合で経費にできます(家事按分)。レシートの山を年末に発掘する作業がつらいのは全人類共通なので、月1回でも入力する習慣が結局いちばん安上がりです。
→ 自宅で副業、家賃や電気代は経費にできる?“家事按分”の割合の決め方
白色のままなら、青色申告に切り替える
青色申告特別控除(最大65万円)は、所得税・住民税だけでなく国民健康保険料も下げてくれる、数少ない「両取り」の制度です。白色申告のままの方にとっては、ここが一番インパクトの大きい見直しになります。
使うには、あらかじめ「青色申告承認申請書」を税務署に出しておく必要があります(原則、適用したい年の3月15日まで。その年に開業した場合は開業日から2か月以内)。まだ提出していない方は、青色申告承認申請書はいつまで?で期限を確認しておいてください。
開業届と青色申告承認申請書は、無料のオンラインサービスで質問に答えるだけで作れます。手書きで役所用語とにらめっこする時間は、正直もったいないです。
なお、青色申告特別控除の満額65万円を受けるには、複式簿記での記帳に加えてe-Taxでの電子申告か、優良な電子帳簿保存のどちらかが必要です(それ以外は55万円、簡易簿記は10万円)。ここは会計ソフトに任せてしまうのが結局いちばん早いところです。
4. 取りこぼしがちな3つの軽減・免除制度
①【法定軽減】所得が少ない世帯は均等割・平等割が7割/5割/2割引き
世帯の所得が一定以下なら、均等割・平等割が自動的に安くなります。2026年度(令和8年度)の判定基準はこちらです。
| 軽減割合 | 世帯の所得の合計が… |
|---|---|
| 7割軽減 | 43万円+10万円×(給与所得者等の数−1)以下 |
| 5割軽減 | 43万円+31万円×加入者数+10万円×(給与所得者等の数−1)以下 |
| 2割軽減 | 43万円+57万円×加入者数+10万円×(給与所得者等の数−1)以下 |
この軽減は多くの自治体で申請不要ですが、大前提として世帯全員の所得が自治体に把握されていないと判定できません。所得がゼロ・赤字の年でも、確定申告か住民税の申告は必ずしておきましょう。「申告してないから軽減が付いていなかった」は、本当によくある取りこぼしです。
②【非自発的失業者の軽減】会社都合で辞めた人は給与所得を「30%」で計算
倒産・解雇・雇い止めなどで離職した方(雇用保険の特定受給資格者・特定理由離職者)は、前年の給与所得を100分の30(=3割)とみなして保険料を計算してもらえます。対象は離職日の翌日が属する年度と、その翌年度末まで。
会社を辞めて独立した方には効き目が大きい制度ですが、これは自動では付かず、申請が必要です。雇用保険受給資格者証(またはマイナポータルの画面など)を持って市区町村の窓口へ。なお、給与以外の所得(事業所得など)は軽減の対象外です。
③【産前産後期間の免除】出産前後の4か月分が免除
2024年1月から始まった制度で、出産する被保険者の出産予定月の前月から4か月分(多胎妊娠は3か月前から6か月分)の所得割額・均等割額が免除されます。会社員の産休中の免除に近い仕組みが、国保にもできたイメージです。こちらも届出が必要で、出産予定日の6か月前から届け出られます。
5. それでも高いときの選択肢
業種によっては「国民健康保険組合」という道も
デザイナー・イラストレーター・ライター・作曲家などの職種には、文芸美術国民健康保険組合のように所得に関係なく保険料が定額の国保組合があります(2026年度は組合員1人あたり月26,000円)。所得が高い人ほど有利になりやすい一方、加入には組合が定める加盟団体の会員であることなどの条件と審査があり、誰でも入れるわけではありません。建設・医師・薬剤師など、他の業種にも同様の組合があります。金額・条件は必ず各組合の公式サイトで最新を確認してください。
払えないときは、滞納する前に窓口へ
いちばんダメなのは、納付書を放置することです。災害・失業・病気・大幅な収入減などの事情があれば、自治体独自の減免や分割納付に応じてもらえる場合があります。滞納すると延滞金がつき、有効期間の短い保険証(資格確認書)になるなど、あとで困るのは自分です。恥ずかしい相談ではまったくないので、早めに窓口へ。
まとめ:国保は「所得の下げ方」を間違えなければ効く
- 国保の所得割は「総所得金額等 − 基礎控除43万円」がベース。前年の所得で決まる
- iDeCo・生命保険料控除・扶養控除・ふるさと納税は国保を下げない(所得税・住民税では効く)
- 国保に効くのは経費と青色申告特別控除(最大65万円)の2つ
- 所得ゼロでも申告はする。しないと7割/5割/2割の軽減判定がされない
- 会社都合の退職なら非自発的失業者の軽減(申請制)、出産予定なら産前産後の免除(届出制)を忘れずに
- 2026年度の上限は合計113万円。金額・料率は自治体ごとに違うので、最終確認は必ずお住まいの市区町村で
「今年の分の経費、ちゃんと拾えているかな」と思ったら、それが見直しの合図です。来年の6月に届く封筒を、こわごわ開けなくて済むように。
※本記事は2026年9月時点の情報をもとに作成しています。保険料率・軽減の判定基準・各種制度の取り扱いは自治体や年度によって異なります。実際の金額や適用可否は、お住まいの市区町村の窓口・公式サイトでご確認ください。
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