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仕事で車を使っている個人事業主・フリーランスの方から、いちばんよく聞かれるのがこれです。「この車、経費で落とせますよね?」
気持ちはとてもよく分かります。車は、買うときも、乗っているあいだも、とにかくお金が出ていく相棒ですから。ガソリン、保険、車検、税金……家計簿につけていると、ときどき「あなた、うちの子でしたっけ?」と聞きたくなるくらいの出費です。
ただ、車の経費は「全額を買った年に落とす」ことが原則できません。ここを勘違いしたまま申告すると、あとで直すのがけっこう大変です。この記事では、車を経費にするときの2つの関門「減価償却」と「家事按分」を、数字つきで整理します。
結論:車の経費は「何年かけて」+「何割か」で決まる
先に答えをまとめます。
- 車の代金は買った年に全額ではなく、耐用年数(新車の普通車は6年、軽自動車は4年)で分けて経費にする
- 中古車は年数が短くなる。有名な「4年落ち」は耐用年数2年になる
- ただし個人事業主は定額法が原則なので、「4年落ちを買って1年で全額」は法人の話。同じようにはいかない
- プライベートと兼用なら、仕事で使っている割合の分だけが経費(家事按分)
- ガソリン・保険・車検・自動車税も、車両と同じ割合で按分するのが基本
「いくらの車か」より「何年落ちか」「仕事で何割使うか」のほうが、経費の金額を大きく左右します。
帳簿づけや申告書づくりに不安がある方は、初年度無料で始められるやよいの青色申告 オンラインのような会計ソフトを使うと、仕訳から申告書の作成までまとめて進められます。
①車の代金は「耐用年数」で分けて経費にする
10万円以上のものを買ったときは、買った年にまとめて経費にせず、使う年数で分けて少しずつ経費にします。これが減価償却です。その「使う年数」は、自分で決めるのではなく、国が資産ごとに決めています。これを耐用年数といいます。
車の耐用年数は、国税庁の表で次のとおりです(一般用のもの)。
| 車の種類 | 耐用年数 | 定額法の償却率 |
|---|---|---|
| 普通車(総排気量0.66L超) | 6年 | 0.167 |
| 軽自動車(総排気量0.66L以下) | 4年 | 0.250 |
| 貨物自動車(ダンプ式以外) | 5年 | 0.200 |
| 貨物自動車(ダンプ式) | 4年 | 0.250 |
計算はシンプルで、取得価額×償却率が1年分の経費です。240万円の普通車(新車)なら、240万円×0.167=年40万800円。これを6年かけて落としていきます。
ひとつ忘れやすいのが、買った1年目は月割りになるという点です。国税庁も「年の中途で取得した場合は、12で除しその年に業務に使用していた月数を乗じる」と説明しています。10月に納車された車なら、1年目に落とせるのは40万800円×3か月÷12か月=10万200円。年末に慌てて車を買っても、その年の経費はほんの一部ということです。師走の駆け込み購入は、あまり報われません。
②「4年落ちの中古車」はなぜ2年になるのか
中古車は、新車より短い年数で経費にできます。中古の場合は、あと何年使えるかを見積もるのが原則ですが、それが難しいときは簡便法という計算式が使えます。
- 法定耐用年数をすべて過ぎている中古 → 法定耐用年数×20%
- 法定耐用年数の一部だけ過ぎている中古 → (法定耐用年数-経過年数)+経過年数×20%
- 計算結果の1年未満は切り捨て、2年未満になるときは2年
普通車(6年=72か月)を4年落ち(48か月経過)で買った場合を、この式に入れてみます。
(72か月-48か月)+48か月×20%=24+9.6=33.6か月=2.8年 → 切り捨てて2年
これが「4年落ちの中古車が最強」と言われるカラクリです。同じ150万円でも、年間に落とせる金額はこれだけ変わります。
| 150万円で買うなら | 耐用年数 | 1年あたりの経費(定額法) | 向いている人 |
|---|---|---|---|
| 新車(普通車) | 6年 | 250,500円 | 長く乗る予定で、故障リスクを避けたい人 |
| 新車(軽自動車) | 4年 | 375,000円 | 維持費も軽くしたい人 |
| 3年落ち中古(普通車) | 3年 | 501,000円 | 程度と年数のバランスを取りたい人 |
| 4年落ち中古(普通車) | 2年 | 750,000円 | 早めに経費化したい人 |
③ここが落とし穴|個人事業主は「定額法」が原則
ネットでよく見かける「4年落ちの中古車を買えば、1年で全額を経費にできる」という話。あれは定率法という、最初に大きく落とす計算方法を前提にしています。
そして個人事業主の法定の償却方法は、定額法です。国税庁も「法定の償却方法は一般的には旧定額法または定額法です」としています。定率法を使いたい場合は、その資産を使い始めた年の翌年3月15日までに、税務署へ「所得税の減価償却資産の償却方法の届出書」を出す必要があります。黙っていると定額法です。
つまり、届出をしていない個人事業主が4年落ちの中古車(耐用年数2年・償却率0.500)を150万円で買った場合、1年目に落とせるのは最大でも75万円(しかも月割り)。法人の節税話をそのまま真に受けると、「あれ、思ったより経費が増えない」となります。
なお、中古車が安く、取得価額が40万円未満なら、青色申告の特例で買った年に一括で経費にできる可能性があります。この特例は2026年4月1日以後に取得したものから上限が30万円未満→40万円未満に広がりました。くわしくは 仕事用パソコンは一括で経費にできる?2026年4月からの「40万円未満」 で解説しています。
④プライベート兼用なら「家事按分」で仕事の割合だけ
ここまでは100%仕事で使う前提の話でした。実際には、平日は現場へ、週末は買い物へ、という方がほとんどだと思います。その場合、経費にできるのは仕事で使っている割合の分だけです。これを家事按分といいます。
国税庁は、家事関連費のうち必要経費になるのは「取引の記録などに基づいて、業務遂行上直接必要であったことが明らかに区分できる場合のその区分できる金額に限られます」としています。大事なのは割合の高さではなく、その割合の根拠を説明できることです。
車の場合、よく使われる基準は次の2つです。
- 走行距離:年間1万kmのうち仕事が7,000km → 70%。いちばん説明しやすい基準です
- 使用日数:週7日のうち平日5日が仕事 → 約70%。訪問や配達が日課の方はこちら
どちらもポイントは記録を残しておくこと。スマホのメモでも、手帳の隅でもかまいません。「なんとなく8割」では、あとで説明に困ります。按分の考え方そのものは 自宅で副業、家賃や電気代は経費にできる?“家事按分”の割合の決め方 でくわしく整理しています。
⑤車まわりで経費にできるもの・できないもの早見表
車両本体だけでなく、維持費も同じ割合で按分するのが基本です。忘れがちな費目も含めてまとめました。
| 費目 | 経費に | ポイント |
|---|---|---|
| 車両本体の代金 | ○(按分) | 耐用年数で分ける。10万円未満なら買った年に全額 |
| ガソリン代・高速道路代 | ○(按分) | 仕事の移動だけなら全額でもOK。旅費交通費や車両費で |
| 自動車税(種別割)・重量税 | ○(按分) | 租税公課として処理 |
| 自賠責・任意保険料 | ○(按分) | 損害保険料として処理 |
| 車検・修理・オイル交換・タイヤ | ○(按分) | 修繕費や車両費で。領収書は保存 |
| 月極駐車場・コインパーキング | ○(按分) | 仕事での駐車分。自宅の駐車場は按分 |
| ローンの元金部分 | × | 車両として減価償却する。利息だけが経費 |
| 駐車違反やスピード違反の反則金 | × | 国税庁も「罰金、科料および過料などは必要経費になりません」と明記 |
反則金がダメなのは、意外と知られていません。仕事の配達中に切られた切符でも、経費にはできません。ここは安全運転がいちばんの節税ということで。
⑥カーリース・ローン・一括、どれが経理はラク?
「どれがお得か」は車の乗り方しだいですが、経理のかんたんさだけで比べるとはっきり差が出ます。
| 買い方 | 経費のしかた | 経理の手間 |
|---|---|---|
| 現金で一括購入 | 減価償却(6年・4年など) | 毎年の計算が必要 |
| ローン購入 | 減価償却+支払利息のみ経費 | 元金と利息を分ける手間あり |
| カーリース(一般的な契約) | 毎月のリース料を按分して経費 | いちばんシンプル |
リースは月々の支払いをそのまま按分すればよいので、帳簿はいちばんラクです。ただし総額では割高になることもあり、契約期間の途中でやめにくいという面もあります。経理の手間と総支払額は、だいたい逆の関係だと考えておくとよいでしょう。
どの買い方でも、減価償却の計算は手作業だと間違えやすいところです。会計ソフトなら、車両の取得日と金額、耐用年数、事業割合を登録しておけば、毎年の償却額と按分後の金額を自動で計算してくれます。ソフト選びで迷っている方は 個人事業主の会計ソフトはどう選ぶ? もどうぞ。
※料金・機能・無料で使える範囲は変更されることがあります。最新の内容は公式サイトでご確認ください。
⑦申告前に確認したい3つのこと
1. 按分の根拠をメモに残す
走行距離でも使用日数でもかまいません。「どう数えて何%にしたか」を1行書いておくだけで、後から聞かれたときの安心感がまるで違います。
2. 「経費が増える=得」ではない
経費が増えれば所得が減り、税金は軽くなります。ただし、手元のお金は買った金額だけ確実に減ります。仕事に本当に必要かどうかが先で、経費の落とし方はそのあとの話です。
3. 迷ったら専門家に聞く
車のように金額が大きく、プライベートとも重なる資産は、判断に迷いやすい代表格です。個人事業主に税務調査が来る確率は決して高くありませんが(個人事業主に税務調査は来る?)、聞かれたときに答えられる状態にしておくことが何よりの備えになります。
最近は、月額制で税理士に相談できるサービスもあります。「この按分でいいのか」「中古車の耐用年数はこれで合っているか」といった単発の疑問を相談できる先があると、申告前の不安がぐっと減ります。
※料金・サービス内容は変更されることがあります。最新の情報は公式サイトでご確認ください。
なお、ここまでの話は青色申告をしている前提のものが一部含まれます。まだ開業届や青色申告承認申請書を出していない方は、弥生のかんたん開業届のような無料の作成サービスを使うと、質問に答えるだけで書類がそろいます。青色と白色の違いは 青色申告と白色申告の違いは? をご覧ください。
まとめ
- 車の代金は買った年に全額ではなく、耐用年数(新車の普通車6年・軽自動車4年)で分けて経費にする
- 中古は簡便法で年数が短くなり、4年落ちの普通車は2年(1年未満切り捨て・最短2年)
- 個人事業主は定額法が原則。定率法にしたいなら翌年3月15日までに届出が必要
- 買った1年目は月割り。年末に買っても落とせるのは数か月分だけ
- プライベート兼用なら走行距離や使用日数で按分し、その根拠を記録しておく
- ガソリン・保険・車検・自動車税も同じ割合で按分。反則金とローンの元金は経費にできない
車の経費は、「買った瞬間にドンと落ちる」ものではなく、「毎年コツコツ効いてくる」ものです。仕組みさえ分かっていれば、あとは会計ソフトが計算してくれます。次の買い替えのときに、ぜひ思い出してください。
「自分の場合はどうなんだろう」という方は、宅建士・FP2級の私が ココナラのホームページ制作 で、副業や開業まわりのご相談にも乗っています。気になる方はぜひ。
参考:国税庁「No.2100 減価償却のあらまし」/「No.2106 定額法と定率法による減価償却」/「No.5404 中古資産の耐用年数」/「No.2210 やさしい必要経費の知識」/「主な減価償却資産の耐用年数表」/「減価償却資産の償却率等表」。制度は改正されることがあります。実際の判断は最新の情報や税務署・税理士にご確認ください。


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